平和研国際会議・シンポジウム
「新たな時代の日本の安全保障について」2


【五百旗頭眞 神戸大学法学部教授】  日本は海という巨大な堀に守られてきた。近代以降、海軍力を強化し日清、日露戦争で成功。日英同盟、ワシントン条約体制、日米同盟まで、主要な海軍国と結んできた。強い海軍力は、近代以降の「海上通行の自由」と、「海上支配の一元化」の基礎であり、これを前提とする自由な通商システムの活用により計り知れない利益を得た。ただし、大陸に勢力圏を作る考えが一時的に強まり、利権に固執して国益を見失い、最悪の結果を招いた。  戦後は、「日米同盟、軽軍備、経済通商国家」という国家戦略を取り、国の安全と繁栄で大いに成功。ただし、対米依存による自己決定力の喪失が懸念された。湾岸戦争でこれが現実化。苦心してPKO法案を成立させ、カンボジアへの派遣を実施。  9月11日のテロで日米関係のみへの依存は終わり、通常に戻る。ただし、米国の圧倒的な軍事有利は継続。  日本は軍隊の使い方、思想がない。自衛への疑義はほぼなくなったが、フセインのような国際安全保障への挑戦者への対応が問題。これまでのような個別的な後方支援ではなく、対応体制の整備が必要。また、軍事と復興支援の両者とも世界の生存と安全のために必要。  海上パトロール等も必要。中国とも協力すべき。中国、韓国の理解を本当に得るには3世代かかるが、アジア全体では考え方が変化し、なぜ日本はやらないのかと言われる。共同利益のための行動は評価されるようになったことを認識すべき。


(質問者1)
北朝鮮からテポドンが飛んできても、自衛隊は対抗できるか。

(志方)現在はどの国も飛行中のミサイルを落とせないが。、基地を壊すことは可能。  兵器体系や、兵隊の質等では世界に誇れるが、総理の強い権限など、いざというとき使うシステムがあるかが問題。

(薬師寺)米国が一国主義的な行動を強める中で、日本はどうするべきか。

(五百旗頭)日本は、持ち駒は少ないが持っている。自己規制せず、国際的な妥当性を持って使えるようにすることが大事。  中国は、日米安保がある限り日本は自立性がないとの従来の考えを変え、「1超多強」の世界の「強」に日本が含まれると考えている。天安門事件と、ユーゴ大使館誤爆事件の後の日本の対応を踏まえたもの。日米関係はより緊密になったが、日本の独自性の発揮は別の問題。北朝鮮についても、国際社会に引き入れるチャンスを逃さない体制が必要。

(薬師寺)エネルギー安全保障での米国の位置づけはどうか。

(坂本)米国の存在は潜在的には大きいが、日々の出来事に直接のインパクトはあまりない。直接に影響するのは中東政策であり、パレスチナへの米国の対応。


(質問者2)自衛隊は強いというが、不審船事件を見れば、映像伝送システムの問題などの課題はある。IT関係のシステムをしっかりさせることが必要。

(質門者3)明治以来、日本の安全保障では弱い中国が前提だったが、変わったのではないか。天安門への日本の対応を、中国側はかえって弱腰と見ているのではないか。

(質問者4)先の不審船を引き上げない理由は何か。日本は言葉の外交が不足しているのではないか。

(志方)IT機器等の整備は当然必要だが、さらにサイバー戦争への備えも重要。不審船については、引き上げたらよいと思う。

(五百旗頭)中国が弱体だったのは、日本は今まで幸運すぎた。現在の状況が正常で、本当の外交能力が問われる。中国は、基本的には協調しながら主張することは主張。中国は総合的に国力を捉えており、現在は経済発展を重視しているが、他方で、経済水準以上に軍事力の整備を図ることも続けるだろう。幸い、中国は日本の協力が必要と思うようになっている。例えば台湾問題でさえも相対化する動きがある。  言葉の外交が日本にとって重要というのは、その通り。より現実を知った、構想力のある、言葉の外交を進めるべきである。

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この講演会は日本財団の助成事業により行っております。