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2003/01/31

公開シンポジウム「新しい国際社会のあり方とわが国の役割」

於:東京全日空ホテル

 大河原理事長の挨拶に続き、薬師寺研究主幹から最近のイラク、北朝鮮情勢と米国の動き等の紹介があり、各パネリストより発表があった。

【佐藤行雄 前国連大使】

 日米同盟では、まず「目的の共有」をした上、米国に注文をつけていくことが重要。米国に言われて何かやるのではいけない。これを前提に、米国のやれないこと、やってほしいことをやる「役割分担」が重要。ただ、日本は安全保障で米に依存し、情報面の能力等もないから、アーミテージ説のように、日英同盟と同じというのは無理。

 イラク問題でも、日本の考え方をその都度言うことが重要。小泉内閣が、国際協調の重要性を主張していることは良い。武力行使については、日本として支持を明確にできるかどうかが問題。米国が国際協調のための努力を尽くした上で戦争を決断した場合、日本としてどうするかは高度の政治判断の問題であるが、個人的には、「支持しない」という選択肢はないと考える。

 北朝鮮問題では、日米韓の協力が鍵。韓国で反米感情が強くなっていることが懸念される。米国との関係では、「拉致問題」「大量破壊兵器」の重要性を主張し続けることが必要。拉致問題だけが取り上げられ、日本の姿勢を疑われないことが重要。北朝鮮問題を国連安保理で扱う場合でも、ミサイルの問題が、かつてのソ連の中距離ミサイルと同様の重要性を有することを、よく主張していくことが必要。拉致問題も日本にとって重要であり、その考え方や実態を、安保理に今から説明しておくことが必要。

 対テロでは、日本のやれることが広がった。自衛隊の活用が進み、非軍事面での役割も大きい。APECの枠組みで、貨物、人の保護、サイバーセキュリティー等も進み、日本は、人材、機材、資金等の面で協力している。テロの温床をなくす活動も重要。

【志方俊之 帝京大学教授】

 湾岸戦争と比較し、今回の戦争は約半分の規模。戦争の理由としては、大量破壊兵器とテロとの関係以外に、やはり石油の存在が大きい。最も問題となのは、多数の死傷者を双方出さないこと。60~70名を超えると米国内で支持されないと思う。

 多国籍軍には、かなりの国が加わるだろう。ドイツ等があれだけ反対できるのは、他でやることをやっているから。日本はアラビア海で油を売っているだけではいけない。開戦時期は、砂嵐の始まる3月下旬以前に終わらせる必要があることから限定される。戦争には勢いもあり、15万人の人間を集めて、何もなしには止められないし、止めた場合モラルの低下は大きい。2~3週間で準備し、2月下旬から3月上旬開戦だろう。米国以外があまり戦費を出さないから、長期間の継続は無理。

 イラクには、南北に特別地域があり、戦場は狭い。イラク軍は町に立てこもるだろう。主戦場はバクダッド、チクリット等。フセインは、これらの町で「人間の盾」を用い、国際社会がタオルを投げるのを待つだろう。

 戦争の勝敗は決まっているから、「人を殺さない」ことと、「ポストフセイン」が重要である。戦術的には、湾岸戦争以後10年で、米軍の装備等は全く新しくなっており、それらが全て使われる。米国にとって、止めることにより失うものが、戦争により失うものより大きくなっており、引き返せる地点を超えたと考える。

 日本は、米国の行動が国際社会で正当性を得られないなら別だが、そうでなければ、直ちに「支持」を明言すべき。そうしてはじめて尊敬も得られる。戦費は、日本が2割程度出すべき。せめて日本は、ペルシャ湾へ入る日本国籍のタンカーの護衛程度は行い、攻撃されたら、当然反撃すべき。今回も特別法を制定すべきである。日本だけが何もできませんと言っていたら、国際的に孤立する。

【田中明彦 東京大学教授】

 米国のイラクへの行動については、「先制攻撃」との批判があるが、湾岸戦争以来、イラクは国連決議に違反し続けてきた。問題なのはイラク。米国の行動を「米国一極支配」という者もあるが、「米国が言ったら、皆が従わなければならない」かというと、現実にはそうではない。昨年から、米国は安保理で自己の行動を正当化する手続きを踏んできた。米国がこれほど手間をかけたことはない。米国がドミナンスを有してはいるが、米国内が民主主義の体制にあり、古典的な一国ドミナンスとバランスオブパワーという状況ではない。問題毎にチェックアンドバランスが働いている。

 いわゆるネオコンの勢力が米国全部を覆い、世界を軍事力で民主化しようとしているというのも、単純化した見方である。米国の政治システムや、国連や多国籍軍という仕組みによるチェック機能がある。米国民もいくら石油があるとはいえ、遠いイラクのためにあまりに多額の戦費を負担することはないだろう。

 戦争への動きが簡単に止まるようには見えないが、開戦が必然と決め付けることもない。例えば、「亡命」といった出口もある。これから2~3週間で方向が決まるだろう。決断するのはフセインである。

 北朝鮮については、この時期に戦争は考えにくいように見えるが、米国が「文書での安全保障の約束」といったかなりの譲歩を示しているにもかかわらず、北が利用することができなかった場合、今よりはるかに危険になる可能性がある。

 日本では、適時の決断が政治指導者に求められる。イラクについては、これまでの手続きにより、決断は容易になっている。日本は、ただ「理解する」にとどまらず、米国を支える体制が必要であり、特別措置法が必要と思う。また、この時期に有事法制を整備しておくことも重要である

【質問者1】

 湾岸戦争の時にはクウェート撤退という目標が明確であったが、今回は大量破壊兵器の武装解除が目標で、戦争は起りにくいのではないか。

【質問者2】
 北朝鮮に対し米国は明確な戦略を持っておらず、ソウル等で大きな被害が生じるため、武力行使できないのではないか。

【佐藤】
 イラクが、自ら兵器を廃棄すれば、攻撃はないだろうが、まだ政策を転換していない。戦争かどうかを決めるのは、やはりイラクである。

【志方】

 国連の査察団の能力では明確な証拠はつかめないとしても、イラクが協力していないのも明らかであり、戦争ができない状況ではない。

 北朝鮮について、大きな被害が予想され、軍事行動の敷居が高いのも事実。ただし、最近の北の潜水艇の活動のように、アクシデンタルな展開も考えられる。

【田中】

 イラクとの戦争は、「起らない」のではなく、「起こさない道も残されている」ということ。ただし、そのためには、サダムは相当の決断が必要。

 北朝鮮は、これまで大量破壊兵器とテロとのリンクということを言われていないが、経済制裁などで厳しい状況になると、何か売ろうということにもなりかねない。状況が変わる可能性もある。

【質問者3】

 湾岸戦争後、パウエル氏はフセインについて、将来は手を打つべきと言っていた。米国は色々な経験を経て、イラクを徹底的に変えたいと考えているようだ。

 北朝鮮については、やはり二正面作戦は難しいのではないか。

【質問者4】

 米国は日本の味方だということを、どう国民に説明するかは難しい。特に、米国のイデオロギー的なアプローチについてはそうである。協力するプラス、協力しないマイナスを、即物的に国民に説明すべきではないか。

【質問者5】

 北朝鮮や中国のミサイル問題については、台湾等と比較すると、日本はあまりにも問題意識がないのではないか。

【田中】
 日米関係の重要性をあまり即物的に説明するのも、かえって日本の身勝手になる。イラクについては、これまでの国連での手続等をていねいに国民に説明していくことが重要。15年間決議に従ってこなかったのだから、良識ある人は理解すると思う。

 中国のミサイルは、北朝鮮やイラクとは別の問題であり、通常の安全保障の枠組みの中で、中国の軍縮ないしは日本のミサイル防衛によって対応を図るべき。

【志方】
 湾岸戦争は、クウェート解放が目的。あそこで止めたことで、米国はポイントをかせいだ。自分は米国は好きではないが、これまでの米国の行動は相当抑制的なもの。イラクが大量破壊兵器を持てば、中東は石油を武器にしだす。日本は中東の石油に強く依存している。どのような中東が望ましいか、日本の利害をよく考えるべき。日本は米国支持を明確にすべきであり、「気がついたら、日本はそばに居てくれた。」ということが重要。

※この講演会は日本財団の助成事業により行っております。

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