トップ  >  イベント・出版  >  「海上の危機管理に関するシンポジウム―現場からの緊急提言―」2016年10月28日開催

イベント・出版

国際会議等

2016/11/10

「海上の危機管理に関するシンポジウム―現場からの緊急提言―」2016年10月28日開催

20161028日開催

「海上の危機管理に関するシンポジウム―現場からの緊急提言―」

201512月に発表された「東アジアの海洋安全保障に関する中曽根提言」を具体化するための検討を行うべく、世界平和研究所では防衛省・自衛隊及び海上保安庁の元幹部並びに学会有識者からなる海洋安全保障研究委員会を発足させ、今年3月から検討を進めてきた。本委員会は、以下の柱からなる

報告書(報告書(リンク先よりダウンロード可能)をまとめた。

1.中曽根提言を受けて

2.海洋安全保障上の喫緊の課題

3.海洋安全保障のための危機管理(提言1)

4.海洋安全保障のための各国の能力構築(提言2)

5.日本としての取組

6.多元的な努力の結集と地域統合の支援――OMSEA設立に向けて

本委員会は、1028日に東京でシンポジウムを開催し、この報告書を発表した。そして、海洋安全保障問題の権威である4名の招待スピーカーからコメントを頂いた。シンポジウムには諸外国の駐日大使館員を含む100名以上の方々が参加した。(本委員会ならびに招待スピーカーのメンバーは次のとおり。)

IIPS 海洋安全保障研究委員会:

委員長  :齋藤 隆  元統合幕僚長

委員長補佐:福本 出  元海上自衛隊幹部学校長 

委員   :佐藤 考一 桜美林大学教授

委員   :鈴木 洋  元海上保安監

委員   :德地 秀士 元防衛審議官

委員   :平田 英俊 元航空自衛隊航空教育集団司令官

招待スピーカー:

佐藤 雄二  前海上保安庁長官

坂元 茂樹  同志社大学教授

鮒田 英一  元自衛艦隊司令官

伊藤 剛   明治大学教授

まず開会の辞として、本委員会の検討にも深く加わった当研究所の佐藤謙理事長が、昨今の世界秩序の揺らぎとその顕著な一局面としての南シナ海情勢に言及しつつ、それらに対する海上の危機管理が持つ重要性とその意義を強調した。

シンポジウムの第1部では、まず福本委員長補佐が本提言の概要を説明した。開かれた海洋と海洋秩序の維持の必要性、201512月の「中曽根提言」の意義、海洋安全保障のための危機管理及び能力構築の2つの提言の概要、並びにそれらと「OMSEA(東アジア海洋安全保障機構)」の関係につき概括した。

続いて佐藤委員から、本提言検討の背景となった南シナ海情勢につき発表が実施され、本提言は中曽根提言に基づく海の安全保障専門家による予防外交の提言であるとの評価がなされた。その後、各委員から提言の細部に関する説明が発表された。

シンポジウムの第2部では、4名の招待スピーカーから本報告に対するコメントを頂いた。

まず、佐藤雄二前海上保安庁長官より、海上保安機関は捜索救助、海上犯罪の取締り等の本来業務を行う上で国際法及び国際的なルールに従って無線電話等により他の船と意思疎通を図ることが必要であり、実際に各国の海上保安機関は総じて、共通のルールに則って適切な意思疎通を行っている旨が説明された。他方で、海上保安機関は国際法に基づいて法執行を行うことが必要不可欠であるが、東シナ海や南シナ海では、適切でない法執行が行われていることも事実であり、法執行の原則に関する共通理解の促進や信頼醸成が重要であると述べられた。

続いて、鮒田英一元自衛艦隊司令官からは、偶発的衝突を予防するための海空連絡メカニズムの早期構築の必要性、各国の海上法執行機関の非対称性の問題、能力構築支援における整備・教育等、長期にわたる実効性確保の必要性が指摘された。

坂元茂樹同志社大学教授は、報告書が海上法執行機関の「緩衝材」としての役割に着目したことを評価するとともに、国際法が各国の共通言語であり、国連海洋法条約が「海の憲法」とも言える重要性を担っている旨を説明した。また、国際法上、武器の使用と武力の行使の境界線が曖昧である旨を判例に照らして解説したうえで、法執行に際しての実力行使は必要最小限度にとどめ、抑制的に措置するという日本の姿勢を範とするガイドライン作りが望ましいと述べた。

伊藤剛明治大学教授は、国際社会において法律が国益を実現するための手段として利用されている実情を指摘した。これに鑑みて、効果的な危機管理の制度を作るためには、緊張を管理しようという政治的意図の醸成がまずは必要である旨を説いた。

これらのコメントを受けて、齋藤委員長の司会のもと、各委員と招待スピーカーによる討議が行われた。まず委員から、日本の海上保安庁および防衛省・自衛隊によるアジア諸国に対する能力構築支援の実績につき説明した。続いて、中国において人工島などに関連して国際法に違反するような国内法を制定する議論がなされていることの問題点、多国間の制度が有効に機能するうえでの諸条件(①リーダーシップをとる国の存在、②制度を維持するコストの低減、③フリーライドの防止)、環境破壊の実態を把握することの重要性などが論じられた。

最後に、聴衆との質疑応答が行われた。聴衆からは、欧州におけるOSCEの信頼醸成措置と比較して、海上法執行機関を含む危機管理のための多国間機構を構築することの画期性、日本のアジア諸国への能力構築支援について国内外に一層の周知を図る必要性に関してコメントがなされ、委員はこれらに同意した。また、OMSEAという機構が主に目的とするところは何かという質問があった。この質問に対して委員は、OMSEAの目的については、昨年の中曽根提言に従って、海洋安全保障に関する情報共有、意見交換を行う場であるとともに、各国間の協力の促進や政策提言を行う場としても考えている旨を説明した。

聴衆と登壇者との間で活発な意見交換がなされ、シンポジウムは盛況のうちに閉幕した。当研究所では引き続き、海外の有識者とも意見交換を深めるべく、国際会議を開催する予定である。

▲ ページ上部へ