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2017/10/10

第8回 東京-ソウル・フォーラム:変化する国際秩序の中での日韓関係

(向かって左より、鄭求鉉SFIA理事長、長嶺在韓大使、林聖男外交部第一次官、三村IIPS副会長、佐藤IIPS理事長)

(前列2人目より左へ、金達中SFIA名誉会長、長嶺在韓大使、中曽根IIPS副会長、李洪九SFIA会長、三村IIPS副会長、金仁浩韓国貿易協会会長、渡邉IIPS顧問、佐藤IIPS理事長、鄭求鉉SFIA理事長、小堀旭化成社長)

世界平和研究所(以下、IIPS)と韓国のシンクタンクであるソウル国際フォーラム(以下、SFIA)は、2017年9月22日~9月23日に「第8回 東京-ソウル・フォーラム」を韓国ソウル市内で開催した。

東京-ソウル・フォーラムは、日韓の相互理解促進・日韓関係の友好的発展を目的とし、外交・安保・経済・社会など幅広い分野に関して、日韓の政・財・学の各界を代表する識者が戦略的意見交換を行う場として、2010年より継続して東京とソウルと交互に舞台を移しながら毎年開催されている国際会議である。

 2017年は、韓国で「共に民主党」前代表の文在寅(ムン・ジェイン)氏が大統領に就任し、9年振りに保守政権から革新系政権に交代した。米国ではトランプ政権が米国第一主義の姿勢を打ち出しアジアにおけるパワーバランスの変化が指摘される中、北朝鮮の核・ミサイル問題が深刻化するなど、東アジア地域を取り巻く環境は緊張の度合いを高めている。

こうした状況の下、新たな日韓協力関係のあり方を検討すべく、「変化する国際秩序の中での日韓関係(Korea and Japan in the Midst of Shifting Global Order )」をテーマ・タイトルに、4つのセッションと両国のビジネスリーダーによるスピーチから構成される、2日間に及ぶインテンシブなプログラムが展開された。日本からは三村明夫IIPS副会長(日本商工会議所会頭)を団長とする13名の代表団が訪韓した。
 
開会式では、李洪九(イ・ホング) SFIA会長(元国務総理)が日韓二国間で定期的に意見交換を行う当フォーラムの重要を強調した。続いて、佐藤謙IIPS理事長より、日韓両国は安全保障に加え、米国新政権の通商政策の不透明さなどの問題を抱える中、共通の基盤に立つ両国間の活発な意見交換に対する期待が示された。
 
続くセッション1では、柳莊熙(イ・ジャンヒ)梨花女子大学名誉教授がモデレーターとなり、「保護主義台頭のリスク:トランプの経済政策と中国の国家資本主義」のテーマで、日本側は高安雄一大東文化大学教授が、韓国側は安德根(アン・ドッグン)ソウル大学国際大学院教授がプレゼンテーションを行った。日韓両国ともに自由貿易を推進してきたが、WTOによる自由貿易の進展が困難な状況下、引き続き両国が自由貿易のリーダー的存在であり続けることが重要との認識で一致した。米国離脱により、その効果が懸念される環太平洋パートナーシップ協定(TPP)については、米国抜きのTPP11でも日本の経済押し上げ効果が期待できるのみならず、高い基準の自由貿易のルール作りを日本が主導することで、米国や中国における保護主義的な姿勢に対するけん制効果への期待が示された。
 セッション1に続く夜の歓迎レセプションでは、韓国側は林聖男(イム・ソンナム)外交部第一次官、日本側は長嶺安政在大韓民国日本国特命全権大使、渡邉秀央IIPS顧問(元中曽根内閣官房副長官)が、それぞれ挨拶を述べ、文政権が発足以降、シャトル外交による日韓両国のより緊密な意思疎通と連携および人的交流が進められており、未来志向の日韓関係をいっそう進めていくことの重要性が強調された。

 二日目のセッション2では、佐藤謙IIPS理事長がモデレーターとなり、「ルール基盤の国際秩序を脱却する米国に直面する日本と韓国」のテーマで、日本側は細谷雄一IIPS上席研究員(慶應義塾大学教授)が、韓国側は金聖翰(キム・ソンハン)高麗大学国際大学院教授がプレゼンテーションを行った。細谷IIPS上席研究員は、米国の最も忠実な同盟国であったドイツが、もはや安全保障面で米国に頼らない姿勢を打ち出す中、日本の自助努力の強化によって同盟強化を目指すべきとの意見を示した。セッション全体では、日韓両国ともに自由とルールの秩序を守り米国との同盟を維持し、模範的な同盟関係のもと安全保障における役割分担をともに果たしていくことの重要性等が議論された。

続くビジネスリーダースピーチでは、金仁浩(キム・インホ) 韓国貿易協会会長と小堀 秀毅旭化成株式会社代表取締役社長よりスピーチをいただいた。金会長は、韓国と日本は多くの国と自由貿易を締結している自由貿易先進国であり、特に2004年以来交渉が中断している日韓二国間のFTAを推進すべきであると述べた。小堀社長は、今後の電気自動車の普及に伴うリチウムイオン電池関連分野に加え、第三国での韓国企業との連携等について紹介した。
 
セッション3では、任晟準(イム・ソンジュン)Lee International IP & Law Group顧問がモデレーターとなり「北朝鮮の核開発問題と地域安全保障」のテーマで、韓国側は金泰孝(キム・テヒョ)成均館大学教授が、日本側は山口昇国際大学教授がプレゼンテーションを行った。金教授からは、歴史問題等により安全保障分野での日韓協力の進展が遅れていることに対する懸念が表明された。山口教授は、国際社会の合意に反して核・ミサイル開発を進めて挑発行為を繰り返す北朝鮮について、大陸間弾道ミサイル(ICBM)の射程範囲に入った可能性が高まったため、米国は北朝鮮の脅威を日韓と同等レベルで見るようになったと述べ、日米韓のより緊密な連携の必要性を指摘した。

続くセッション4では、細谷雄一IIPS上席研究員がモデレーターとなり、「新な国際秩序の時代における日韓関係」のテーマで、日本側からは西野純也慶応大学教授、井出智明IIPS主任研究員が、韓国側からは金鈗(キム・ユン)三養ホールディングス代表理事・会長、朴喆熙(パク・チョルヒ)ソウル大学国際大学院教授がプレゼンテーションを行った。
西野教授は、文政権が歴史問題は外交の条件とせず未来志向の日韓関係構築を目指す「ツートラック」戦略の継続に期待を示した。井出主任研究員は、人的・文化交流等を通した両国間の友好関係と相互理解の促進の重要性を強調した。金代表理事・会長は、両国経済は補完関係にありインフラ、シルバー産業、防災対策等の分野での民間協力に期待を示した。朴教授は、文大統領は歴史問題を管理することの必要性を十分認識しており、日本側は両国関係の悪化を心配する必要はないと述べた。また朴教授は、韓国は北朝鮮問題に加え中国との関係悪化により朝鮮半島の安全保障がいっそう不安定な状況になっており、こうした時こそ、日韓協力の新たなビジョンの設定が必要と提案した。
長嶺大使は加点主義による未来志向で両国間の困難を乗り越えるべきとの見解を示した。中曽根副会長は、日韓中の小学生が童話の創作を通じて交流する取組みを紹介し、若い世代の交流による友情と相互理解促進の効果を強調した。

最後に、全体の討議を受けて三村IIPS副会長は、①文大統領が対日政策に関し現実的な対応を取っていることへの安心感、②中国の行動に対しこれまで存在していた日韓両国のパーセプションギャップの差が解消したことへの歓迎、③TPP11推進に対する日本側の期待感、などについて述べた。鄭SFIA理事長からは、1年前からの情勢変化として、①北朝鮮の脅威の高まり、②韓国と中国の関係悪化、③トランプ政権誕生による自由主義(リベラル)後退、④文政権による労働保護的な政策をあげ、日韓両国にとって共通の危機に対して、協力して対応していくことの重要性を強調し、2日間にわたる会議は閉幕した。

 また、会議終了の翌日9月24日、IIPS訪韓団とSFIA幹部らは、韓国のイ・ナギョン国務総理の主催で、総理公邸での朝食会にご招待いただき、今後の日韓両国の友好協力関係等について有意義な意見交換を行った。

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