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2020/08/07

「2020年代の新たな日本のICT技術戦略」【上・プレゼン編】(中曽根平和研究所「デジタル技術と経済・金融」研究会)

 中曽根平和研究所では標題につき、日本の情報通信分野の技術開発を長年リードしてきた浅見徹研究委員(株式会社国際電気通信基礎技術研究所(ATR)代表取締役社長)との意見交換を、以下の通り開催しました。

 【上・プレゼン編】【下・丁々発止編】の2回に分けて、概要をお届けします。なおスクリプトはこちら、浅見委員のプレゼンテーション資料はこちらをご覧ください。

1 プレゼンテーション「2020年代の新たな日本のICT技術戦略」(浅見委員)

 

■総務省「新たな情報通信技術戦略の在り方」の重要ポイント

総務省が先般パブリックコメントを募集した「新たな情報通信技術戦略の在り方」(第4次中間報告書(案))<https://www.soumu.go.jp/main_content/000688902.pdf>)の作業に携わった者としてその内容に触れつつ、今後10年の新たなICT技術戦略について展望したい。

当該報告(過去の報告書含む)の中で、特に重要と考えているいくつかのポイントは「量子技術イノベーション戦略」「ICTグローバル戦略」「重点研究開発分野およびIoT(モノのインターネット)推進体制構築」そして「IoT/BD(ビッグデータ)/AI(人工知能) 時代に対応するための⼈材像」などだ。
量子のような先端技術を国内でしっかり育てるとともに国際連携も視野に入れていく、またICT研究開発戦略全般について国際連携のみならず社会課題解決と寄り添う形で考えていく、そしてそれらを実現するために「プロデューサ」「イノベーター」「サービス開発人材」「エンジニア」からなるチームを組成する、と技術的・地理的・社会的・人材的拡がりに配意したものとなっている。

 

■2つの「そうぞう」の重要性:Creation(創造)、とImagination(想像)

特にイノベーションを起こしていくにあたっては、人材は重要だ。先にあげた人材像の4タイプのうち、日本は2番目の「イノベーター」人材が少し弱い。今後10年のICTイノベーションは、ユーザ企業のデータ利活用や、脳情報、言語処理データ、宇宙データといったような、様々なものとICT技術とをかけ合わせていく形となる。そうした時に、特に2つの「そうぞう」が大切となる。
1つは「クリエーション(創造)」だ。そしてもう1つは「イマジネーション(想像)」だ。特に後者は、イノベーションを起こせるような画期的なサービス開発にあたってのイメージ作りという面で、重要。

 

■ICTの失われた20年 ~個人向けサービスの革新は進むが、企業・行政のICT革新は?~

日本におけるインターネット時代のICT技術社会戦略の嚆矢は、2001年のe-Japan戦略であった。しかしながらこの20年で、個人向けサービスの革新は進んだものの、企業・行政のICT革新については道半ばといわざるを得ない。
この20年で技術的に大きく進んだのは、「コンピュータ(サーバ)の仮想化技術」と「通信ネットワークの高速化技術」だ。前者は質的革新で米国中心の技術、後者は「量的革新」で日本が特に光通信の分野で世界をけん引してきた。しかし、この両方を組み合わせて大量の情報処理を世界中どこでも同じように安価かつ分散的に出来るようにした「クラウドサービス」は米国に席巻されている。
そしてこのクラウドサービスは、GAFA等に代表されるよう、個人向けに先んじて普及し、企業・行政への日本での導入は、緒に就いたばかりもしくは道半ばだ。企業・行政は、それぞれの顧客に特化して開発された「テーラーメイド」なシステムに慣れてきたことがその要因として大きい。

 

■携帯第五世代(5G)以降のイノベーション要件とは?

携帯第五世代以降(Beyond 5G)の戦略領域のキーワードは以下の3つだ:「超高速」「超低遅延」「超多数同時接続」。これらは国家間でその性能優位性を争うものでは必ずしもない。むしろ、「相互接続性」「相互運用性」といった通信の特性を鑑みた場合に、世界共通のゴールであるといえよう。
5GおよびBeyond 5Gは、IoTとして、工場での生産工程(検査・監視・制御)、もしくは自動運転(事故防止)等における、臨機応変な対応への活用が期待される。そこでは0.1秒もしくは0.01秒以下といった極めて短い応答速度が求められる。この応答速度には、通信速度のみならず、画像処理やネットワーク処理に要する時間も含まれると共に、その実現には生産ロボット操作や自動車操縦とのなめらかな連携も必須となる。
こうした技術開発に当たっては、タイトな諸条件を、一連の流れとして実現するために、(技術開発の塔に閉じこもることなく)実サービスを企画・活用する人々と一緒になったイノベーションが必須になる。そのなかでこそ、本当に必要な要素技術の研究開発に至ることが可能となる。

 

■ICT技術の社会実装のカギとなる「標準化」「政治リーダーシップ」

このCOVID-19は、世界各国のICT技術の社会実装ぶりの差異を露わにした。活用されたICT技術そのものはシンプルで易しいが、その社会実装にあたっての「ソフトウェアツールの標準化」「業務フローの標準化」「業務内容の標準化(ジョブ型雇用)」が進んでいるか否か、また個人データの観点から「情報保護制度の標準化」が進んでいるか否か、が、その社会実装・社会活用を左右する。日本は給付金や感染者状況把握など、今回の数々の事例から、こうしたところの重要性を学ばなければならない。東アジア各国で、日本より上手に活用できている国・地域が多くあったことを忘れてはならない。
診療記録の電子化・オンライン化は、いまや日本でも高い水準に達しつつあるが、この技術そのものは今から50年前ほどから研究されてきたものである。しかし長年、制度化が見送られ、2000年前後の制度化の後も普及率は低いままだった。しかしこの社会実装を左右したのは、2005年、当時の小泉首相の強力なリーダーシップであった。このように、社会実装の加速には、政治のリーダーシップが大切であることも忘れてはならない。

 

■デジタル時代の価値創造の源泉となる「データ流通基盤」に必要な要件

インターネット上に掲載される広告の例を見るまでもなく、インターネット上の電子商取引は世界を股にかけたものになっている。広告出稿者、広告代理店、そしてそれらが置かれているクラウドサービス上のサーバが、いずれも日本国外でかつ別々の国、ということも珍しくない。
こういった状況下で果たして、広告としての価値発生の源泉国・源泉事業者を特定し、そこに適切な課税が為される体制があるのか、という疑問がある。
いまのインターネットの技術は、匿名性が大きな前提となっている。インターネットの商取引等を含めたホームページ閲覧で一定のセキュリティを担保したものとして最も用いられる「HTTPS」 (Hypertext Transfer Protocol Secure)というでは、善意のユーザと善意の事業者間の取引でないとデータ授受の確認、受信場所の特定は極めて難しい。
勿論、技術的にこれを解決する方法はいくつかある。しかし、これらが、関連する各国・各事業者から受け入れられて、社会実装されるかは、また別の問題だ。そこでは例えば、日本国内でまずは実証しつつ、海外とも共同歩調を合わせながら検証・展開していく、といったリーダーシップ方策を考えることは出来るだろう。

 

以下【下・丁々発止編】に続く

 

2 日時等:令和2年7月27日(月)15:00-17:25 (ウェブ会議により実施) 

3 参加者: 中曽根平和研究所「デジタル技術と経済・金融」研究会 研究委員、および中曽根平和研究所関係者 ほか

 

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