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2020/09/28

「コロナ時代における、国際金融システムの危機と脆弱性」【下・丁々発止編】(中曽根平和研究所「デジタル技術と経済・金融」研究会)

 中曽根平和研究所では標題につき、米国で活躍する新進気鋭の金融経済学者、泉 隆一朗研究委員(米Wesleyan大学准教授)ならびに、コンピュータ・金融・会計を専門とされる、富田亜紀研究委員(東洋大学情報連携学部教授)との意見交換を、以下の通り開催しました。

 【上・プレゼン編】に続き、【下・丁々発止編】の2回に分けて、概要をお届けします。なおスクリプトはこちらをご覧ください。

 

 

1 議論

 

■主な論点1:コロナ時代の金融技術・金融市場・金融ルールをめぐる各国の新たな戦略

 

○中国の方向感について。証券化商品をはじめとした金融商品流通(売買)市場の流動性をあげ、外国投資家を呼び込みつつ、国内投資家の厚みを増していく、というのが1つの戦略方向性として在りうるのではないか。
また中国の場合、パイロットプロジェクトの試験運用のようなこともよく行われる。(デジタル中国元など) デジタル技術を金融商品市場の発展にどう役立てられるか、というトライアル方向性もあるだろう。他国よりも、柔軟にリスクテイクしながら、取り組める素地がある。

〇また、金融商品や投資対象の評価に対する、各国におけるSNS(ソーシャルネットワークサービス)の活用拡大も見逃せない。分野によっては、評価機関の代替的な役割を果たしている部分もあろう。

〇米国については、コロナ渦はあるものの、金融危機当時よりもルール作りや商品への分析が進み、市場自体も元々の投資家層・発行者層の厚みをバックに、今のところ大きく崩れることなく持ちこたえている。従って、証券化をはじめとした金融商品をめぐるルールに大きな路線変更はないのではないか。
また、テスラの時価総額上昇に象徴されるよう、新興企業が株式公開するNASDAQはじめとした米国株式市場においては、ハイテク、ESG関連企業など、今後の成長性を、投資家が非常に高く評価する傾向があるように感じる。「電気自動車そして再生可能エネルギーが、世の中の産業構造を変える」といった風に。

 

■主な論点2:金融商品・会計開示をめぐる、今後の世界的フロンティア

 

○データを含めた、知的財産の開示をめぐる制度開発の試みは、世界的に行われている。課題は、保有する知的財産と、その価値発現(マネタイズ)とのつながり、価値創出プロセスをどう示すかだ。
(このためには「この技術はいろいろな活用方法がありうる。皆さんお考えを」という状況からの脱却が必要。米国会計学会との議論では、一定の要件を充たす開発費の資産計上を義務化している国際会計基準での議論が、よりふさわしいのではないか、との見立てであった。)

〇証券化商品を含めた金融商品の、世界的なリスク対策への活用について。
自然災害のような、局所的な危機に対しては、そのリスク発生の連動性・相関性の薄さを踏まえて、証券化商品をはじめとした金融商品の組成が可能。例えば、カリフォルニアで自然災害が起きてもマサチューセッツでは大丈夫だろう、もしくはその逆を踏まえ、「リスク分散がなされる」として1つの債権プールに入れられるなど。局所的な危機に対して、金融商品は、リスクシェアの観点から効果を発揮する可能性がある。
一方で、経済ショックのようにある程度大きな世界的範囲で起こるものには、証券化商品として強靭性を発揮するには課題が残る。

 

■主な論点3:日本にとっての国際的チャンス

 

○個別商品に関する情報開示の方法の工夫や、地域や専門分野の知見を活かした商品づくりなどをはじめ、証券化をはじめとした金融商品の流通市場における流動性を高める営みを行っていくことが、外国人を含めた投資家層・発行者層の幅と厚みをつけ、国際金融市場における、日本のステイタスを向上させるために、重要。
(日本の投資家層には慎重な態度が見られ、また「うまみのある商品」が生まれにくい素地もあるが、こういったところを乗り越えるためにも・・・)

〇また、証券化商品をはじめとした金融商品が、危機時にショックを増幅してしまうようなメカニズムをあらかじめ抑制するために、個々の商品の「不透明度」を指標化するようなアイディアでリードできる部分もあるのではないか。

〇国連のイニシアティブであるSDGs(持続可能な成長目標)を支える、ESG(環境・社会・ガバナンス)投資において、ESG経営の国際評価統一指標づくりに向けた動きを、国際統合報告評議会(IIRC)が音頭を取って進めている。こうしたところで、日本が貢献できる余地があるのではないか。

 

2 日時等:令和2年9月16日(水)12:45-15:15 (ウェブ会議により実施)  

3 参加者: 中曽根平和研究所「デジタル技術と経済・金融」研究会 研究委員、および中曽根平和研究所関係者 ほか

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