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研究

政策提言

2016/01/12

東アジアの海洋安全保障に関する中曽根提言

東アジアの海洋安全保障に関する
中曽根提言

2015年12月16日
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I. 背景 
 東アジアは世界で最も人口が多く、また、今世紀最もダイナミックに成長する地域である。この地域の国々を連結する東シナ海及び南シナ海は、膨大な貿易量が絶え間なく流れる世界経済の大動脈である。


 したがって、東アジアにおける海洋の自由と海洋安全保障は世界の平和と繁栄の前提条件であり、域内及び域外双方の国家にとり、重大な関心事項である。しかるに最近、この関連で懸念を惹起する出来事が、頻度及び深刻さの度合いの両面で増加しており、国際場裏で政府間及び民間の会議における熱心な討議の対象となっている。


 私は、このような背景に対し、今後も東シナ海と南シナ海を真の「平和と繁栄の海」とするために、以下の提案を行うこととしたい。これは、この問題に関する議論及び政策形成への寄与する政府、研究機関、学会、メディアを含む域内及び域外の多くの当事者に対して呼びかけるものである。


II.国際的なルールの遵守及び実務協力
1. 東アジアにおける海洋の自由と海洋安全保障を確保するためには、まず、すべての当事者が確立された共通のルール、すなわち国際法及びその他の国際的な行動規範を再確認し、誠実に遵守する必要がある。その中で最重要なのは、1982年の「海洋法に関する国際連合条約(国連海洋法条約)」で規定されている航行及び上空飛行の自由の原則である。これらのルールの多くは1976年の「東南アジア友好協力条約」及び2002年の「南シナ海における関係諸国行動宣言」などの地域文書にも規定されている。


2. 反対に、すべての当事者は、これらのルールと整合しない独自の主張の展開や、不信感や緊張を増幅する一方的な行為を自制する必要がある。仮に意見の相違もしくは特定の権利・主張に関する紛争が存在する場合には、これらを平和的に管理し、外交交渉や仲裁など確立された方法により解決することが不可欠である。


3. 一方、関係当事者間の安心感と相互信頼を高め、それにより東アジアの海洋安全保障を強化するため、以下を含む実際的な分野で共同の努力を一層促進すべきである。
(1)域内国・機関の海洋状況認識(MDA)能力の強化
(2)法執行及び人道支援・災害救助(HA/DR)活動の分野における調整及び能力構築支援
(3)各国の海洋政策及びその実施機関の組織や活動に関する対話
(4)海洋に関する国際法の解釈及び実施に関する各国の立場や問題を明確化するための対話
(5)南シナ海に関する行動規範(Code of Conduct)の早期策定
(6)連絡メカニズム及び2014年4月に採択された「洋上で不慮の遭遇をした場合の行動基準(Code for Unplanned Encounters at Sea:CUES)」のような空中・海上で遭遇した際の安全のためのルールの構築及び拡大
(7)海洋科学技術、海洋資源管理、海洋環境の監視及び保護、災害リスク低減など非伝統的安全保障(人間の安全保障)分野に関する協力


III. 「東アジア海洋安全保障憲章」(仮称)
 域内及び域外の関係国が、共同でかつ包括的に、海洋安全保障分野に関する上記の目標、ルール及び措置を再確認するため、「東アジア海洋安全保障憲章」(仮称)を採択するよう提唱する。このような文書は、東アジア海域における現状を改善するために焦点が絞られた政治的枠組みを提供し、更なる協力推進の原動力となろう。


IV. 東アジア海洋安全保障機構(OMSEA、仮称)
1.地域の海洋安全保障を促進するための主要手段として、上記Ⅲの憲章採択と平行して、東アジア海洋安全保障機構(Organization for Maritime Security in East Asia: OMSEA、仮称)の創設を提案する。
 その目的には以下が含まれる。
(1)海洋安全保障に関する情報、意見及び考えを交換するための常設かつ開かれた場の提供
(2)客観的立場からの情報の収集及び統合並びにそれらの結果の共有
(3)上記II.3に記した諸分野における既存の努力を促進または補完するために共同の措置を実施し、政策提言を策定すること


2. このOMSEAに関する提案は、世界平和研究所が2015年1月に紹介した構想を発展させたものである。過去1年間に、ASEAN地域及び東アジア域外からを含む様々な関係者と行った討議の内容を反映し、修正を行った。


3. OMSEAの構成国及び活動は東アジア域内及び域外に開放されたものとすべきである。OMSEAの権限及びその他の詳細は速やかに決定されることとし、このために世界平和研究所は他の当事者と作業を行う用意がある。ASEAN地域がこのプロセスにおいて中心的役割を果たすことを歓迎したい。


4. 2015年11月の創立10周年記念会合において、東アジアサミット(EAS)参加国首脳が、海洋分野の協力を優先的な協力分野に加えることが更に検討に値する旨確認したことに留意し、OMSEAは EASとの間で適切な関係を構築すべきである。

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