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研究

研究レポート

2018/10/26

「100年に1度の転換点に立つ自動車産業、中国の外資開放の意味を考える」

江藤進 主任研究員による研究レポート「100年に1度の転換点に立つ自動車産業、中国の外資開放の意味を考える」を掲載しました。

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(要旨)

自動車産業は、産業・経済の牽引役として我が国は勿論、多くの国において基幹産業として位置づけられているが、斯産業は今100年に1度と言われる大転換点に立っている。

Mercedes-Benzが発表した"CASE"に代表されるように、Autonomous ではヒトからAIに、Shared & Serviceでは所有からシェアに、Electricでは石油から電気に取って代わり、何よりもConnectivityで個から社会と常時つながるようになる。情報化、電動化によるキーコンポーネントの転換で、関連産業とともにサプライチェーンが変化し、スマホの比ではない需要の誘発だけで終わりではなく、CASEの各々が結びつき新たな価値が生まれ、産業構造とともにビジネスモデルも変わる。ビッグデータやAIを武器とするITプラットフォーマーの参入がこれを加速し、競争軸が変化し、他産業を巻き込み社会全体へ波及する。自動車が中間財となり、収益の源泉が変化する可能性とともに、新旧産業の新陳代謝が否応なく進む。モノづくり(ハード)からサービス提供(ソフト)へ、クルマ中心からヒト中心の都市デザインへ、突き詰めればクルマではなく社会の中でどう過ごすか、社会課題(ニーズ)を踏まえ、改めてモビリティならではの特徴を再定義し、移動と自動車以外の他領域との掛け算による新たなビジネス機会の創出へ発想転換が求められる。

かかる中、世界最大市場の中国が昨年EVシフトを宣言するとともに今春自動車産業の外資規制撤廃を発表し、歴代指導者が建国以降堅持し続けてきた政策の方向を転換した。

中国は、外資の活用による産業育成から始まり、1桁多い市場規模や規制、優遇策等も活用し、世界最大の自動車生産国にもなり、需給両面から自動車大国となった。製造強国を目指す中国製造2025を推進する中、中国の自動車メーカーは内燃機では劣後する一方、次世代のEVでは、資源を含むサプライチェーンをはじめ多くの面で優位性を有するだけではなく、CASEの各領域でも先行する部分を多く持つ。世界最大の市場を前に外資に選択権は無く、中国は自動車強国化のため競争軸の変更も意図したEVシフトを進めるとともに、外資規制撤廃は、米中貿易摩擦が時間軸を早めた面はあるものの、外資の出方等、相応の勝算を持って政策転換に踏み切ったものと考えられる。

更には、千年の大計「雄安新区」を打ち上げ、スマート国家の確立を目指す。裾野の広い自動車産業の基幹産業化による国富づくりだけでなく、AI・IoTの活用による社会システム構築と国家管理(監視社会)の中でCASE化を進める自動車産業を改めて活用しながら技術開発をリードし、産業基盤を固めるとともに、その標準化と輸出等を介して実質的に中華圏を拡大することで、国境を越えた"新たな開発独裁"が進む可能性も否定はできず、中国起点でのもう1つの転換点となる可能性もある。

自動車産業は新たな競争と協調の時代に入った。CASEを機会と捉え、何を磨き、何を加え、どこと組むか、冷静な分析の上、趨勢を決する前の今、迅速な行動が求められる。同時に中国に学ぶべきは学び、協働することも必要な時期と考える。我が国が自動車強国として次代も引き続き牽引することを期待する。

(以上)

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