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研究

研究レポート

2018/12/13

貧困の高齢化にいかに対応すべきか

田中英敬 主任研究員による研究レポート「貧困の高齢化にいかに対応すべきか」を掲載しました。

本文はこちらからダウンロードいただけます。


(要旨)

 

現在の日本の経済・社会を取り巻く問題の中で、人口動態の変化は決して避けることができないという意味では最も深刻な問題と言える。日本では、現役世代の格差は良い意味でも悪い意味でもあまり大きくはない。しかし、現役時代に僅かにしか感じられなかった格差は徐々に蓄積して、高齢期に入って一気に拡大する。特に、団塊の世代が後期高齢者となる2025年、団塊ジュニア(就職氷河期世代)が定年を迎える2035年は間近に迫っており、急を要する。

本稿では、今後進行する貧困の高齢化を概観するとともに、その対処として、いかに高齢者の就業を促進できるのかを、検討した。高齢者が就労の継続をあきらめる切っ掛けは、定年と年金支給開始である。この二つを乗り越えて、就労を継続できるような環境作りが喫緊の課題と言える。

 本稿で提案したいのは第一に年金の繰り下げ受給を促すことである。高齢者と一言でいっても、健康面、家族や家計の面でも大きな多様性がある。このため、年金の支給開始年齢を一律引き上げることには高いハードルが存在する。次善の策として、年金の繰り下げ受給を促すことが求められる。繰り下げ受給は支給開始年齢を引き上げることと同様の効果を持つため、高齢者の就業を促すことができる。制度的には現在も繰り下げは認められているが、在職老齢年金制度の存在などによって十分に機能していない。在職老齢年金制度を撤廃するとともに、繰り下げ時の増額率を戦略的に高めに設定するなど工夫を行う必要がある。

 第二に、高齢者向け勤労所得税額控除(EITC)の創設である。低所得で十分な備えができていない高齢者には、常に不測の事態から立ち直れずに自立できなくなってしまうリスクがある。リスクが顕現化したのちに、それを救うセーフティネット(生活保護制度)も必要だが、その手前で就労を継続するように支援を行うことは今後一段と重要になる。そうした点でも、高齢者向けEITCは有効ではないだろうか。

団塊の世代は数年後には後期高齢者となる。高齢者の就労という意味では、団塊の世代に続く世代が主な対象となるが、次の大きな人口集団である団塊ジュニアが高齢期に入るまでそれほど時間はない。今すぐに決めていかないと間に合わない段階にあることを意識して、迅速に検討、実行していく必要がある。

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