新しい国際社会と日本の対応
平和研会議報告
「欧州における地域協力の拡大と国際社会への影響」1


 第1セッションでは「EUの拡大と将来」について2名から報告が行われた(司会:薬師寺泰蔵 当研究所研究主幹)。
 最初に、ベルンハルド・ツェプター 駐日欧州委員会代表部大使は、EU拡大による新しい欧州構築への気運が高まる中で、EUは、@最終的に一つの統合された政府(integrated government)をめざすのか、又は加盟国の主権を尊重して政府間(inter-government)の協調関係にとどまるのか、A各機構の役割分担の問題、B補完性原則の適用等の課題を指摘した上で、これらの問題についてはコミュニティ・メソッドで解決していくべきとの考えを示した。また、テロ対策や発展途上国支援等に関しては、EUは日本や米国との協調が重要になってくるとの見方を示した。


 次に、クリスチャン・ルケーヌ パリ政治学院国際研究センター副所長は、EU25カ国への拡大は、シューマン宣言・ローマ条約の基盤である平和と民主主義が新たに10カ国に導入されたという点で、歴史的な継続性が見られると述べた。9.11テロに関しては、EUはグローバルガバナンス・マネジメントが不充分であることを認識すべきであると指摘した上で、今後の課題として、閣僚理事会が指名する「欧州大統領」を創設して共通外交・安全保障政策(CFSP)代表や対外関係委員長等の経験を持つ外務大臣と協調して対応する体制を構築し、欧州の可視性を高めるとともに、欧州としての外交政策を明確にする必要があるとの見解を示した。また、EUの外交政策を憲法に列挙し、加盟各国独自の外交政策分野との区別を明確にすべきであると主張した。更に、EU拡大に伴い、効率的で民主主義的な政策策定のため新たな意思決定ルールの必要性を指摘し、多様な加盟国から構成されるEUの意志決定には、多数決の導入が望ましいとの見方を示した。最後に、トルコの加盟問題に関しては、今後EU加盟が可能と考えられる地域及び境界の明確化が求められるが、特定分野に関する部分的なEU加盟制度も解決策の一つであるとの見解を示した。



  最後に、庄司克弘横浜国立大学教授の論文について、薬師寺泰蔵研究主幹よりその概要が紹介された。庄司教授の論文は、EU拡大のプロセス及びそれに伴う機構改革に関する問題に焦点を当てたものである。EU機構改革は最も微妙な問題であり、諮問会議では未だ議論されてはいないものの、大国間で(非公式に)議論は進んでいるという状況を指摘した上で、機構間のバランスはどうなるのか、EUをリードする機構はどれか(大国主導の閣僚理事会か、全体の利益のために独立的に活動する委員会か)が重要な問題であるとの見方が示された。また、EUと加盟各国の権限に関しては、EU全体の傾向としては権限補完性原則に基づき、加盟各国の国内議会へ権限を戻す方向にあるとの指摘がなされた。更に、意志決定方式については、欧州委員会が提案している、加盟国の多数決とEU全体の人口に基づく多数決の両方をカウントする方式が、民主主義と透明性を高めるという理由から合理的であるとの見解を示した。


 以上の報告を踏まえて、議論が行われ、トルコ加盟問題については政治的、経済的観点から議論が行われた。





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この講演会は日本財団の助成事業により行っております。