新しい国際社会と日本の対応
平和研会議報告
「欧州における地域協力の拡大と国際社会への影響」2


 <第2セッション>


 第2セッションは「ユーロ流通開始と経済通貨統合の欧州経済への影響」と題して、EU統合の経済的側面について議論を行った(司会:小堀深三 当研究所首席研究員)。

 最初に、イタリア欧州大学研究所のマイケル・アルティス教授から、1999年にスタートしたEMUの4年間の評価について発表が行われた。ここでは、各国経済のコンバージェンスが進展している事実、ECBの金利政策についてFRBと比較した反応の遅れを指摘する見解に対してはそれはむしろ米欧の経済状況の差を反映したものであるとみられることなどを分析しつつ、1997年のアジア危機や2001年のITバブルの崩壊の影響にもかかわらず1999年のEMUの導入や2002年のユーロキャッシュの導入は成功裡に行われたものと評価している。但し、各国経済の現況などを踏まえると域内消費者物価を2%のバンドに抑えることは現実的でない点等、EMUの更なる発展に向けては多くの課題があることを指摘した。



 次に、アメリカン大学教授であり、IIEの客員研究員を務めるランダール・ヘニング教授から、現下のEMUについて以下3つの点から発表があった。第一に、「安定・成長協定」(SGP)については、各国の多元的財政政策とECBの一元的金融政策の矛盾が顕在化しており、再検討が必要になっている。具体的には単年度の実際の財政赤字額でなく、ビジネスサイクルを考慮した構造赤字を用いるのが望ましいのではないかと強調した。第二に、中央銀行の独立性については、社会的な支持が不可欠であり、その確保のためには政治的な手腕も必要である旨指摘があった。第三に、対外的には、マンデートをもった「ミスターユーロ」の存在と、国際的協調メカニズムの確立が必要である旨言及があった。ここでは特に米国における政策形成経路の整理の必要性についても触れられた。



 最後に、慶應義塾大学嘉治佐保子教授から、国際通貨としてのユーロのパフォーマンスとアジア金融統合へのインプリケーションについて発表があった。ユーロのパフォーマンスについては、1999年の導入以降減価を続けた背景として、下落を続けたこと自体からくる失望売り、米国の好景気、ECBに対する信任の欠如、短期投資の為替レート安定化機能が変化したことがあったと考えられるが、このうち、米国経済の状況には変化がみられ、2002年6月にはドルが対ユーロで減価しはじめたとの分析が示された。国際通貨としてのユーロについては、少なくとも、自国レートの算出にユーロを含める国は増えている旨指摘があった。アジア金融統合については、アジアと欧州の違いの大きさについて強調するとともに、何よりも重要なのは日本がそのために如何なる犠牲も払うという点についてのコミットメントであるとして全体を結んだ。


 この後、フリーディスカッションにて、ユーロ導入の成果(欧州の将来についての議論の活発化、各国制度改革の進展、価格の比較可能性増大)、英国のユーロ参加の可能性、イラク危機のユーロへの影響等についても活発な議論が行われた。



この後、フリーディスカッションにて、ユーロ導入の成果(欧州の将来についての議論の活発化、各国制度改革の進展、価格の比較可能性増大)、英国のユーロ参加の可能性、イラク危機のユーロへの影響等についても活発な議論が行われた。




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この講演会は日本財団の助成事業により行っております。