平和研国際会議・シンポジウム
「IT革命がもたらす問題と国家の役割」第3セッション

最後の第3セッションでは、「政治・社会」について次の3人の研究者より報告が行われるとともに、当研究所中曽根康弘会長からもコメント、問題提起が行われた(司会:薬師寺研究主幹)。慶応大大学院政策メディア研究科の金子郁容教授は、藤沢市の例を通してIT化の持つ意味を説明しつつ、今後の可能性を含めてNPOの重要性について言及した。

英国ティーサイド大学のブライアン・ローダー教授は、米英における投票率の低下や政治的無関心の増大など民主主義の危機に対して、選挙運動、市民フォーラム、バーチャルな政治運動などを、インターネットを活用しながら行っている具体例を紹介した。米国ジョージ・タウン大学のリンダ・ガルシア教授は、米国における通信政策の歴史を振り返りながら、IT革命とメディア、そして政治との関係を論じ、多様な政府の役割を説明した。  中曽根会長は、90年代における日本政治の状況から現在の小泉政権への変化を、この間のメディアやITの発展に関連付けながら、大統領的首相と議員内閣的総理といった二つの役割の観点から論じ、IT革命そしてインターネットが政治や選挙に対して持つ意味についての問題提起を行った。これを受けて、パネリストを中心に活発な論議が行われ、IT革命と政治、とくに選挙との関係についての分析の重要性やITを効果的に活用するための行政区域の大きさ、そしてデジタル・デバイドへの対応など多様な問題に対する新たな視点の提示が行われた。

以上の議論を受けて、公開シンポジウムでは、当研究所大河原良雄理事長の司会により、第1セッションについて奥野(藤原)教授が、第2セッションについてリルランク教授が、第3セッションについて薬師寺研究主幹が、それぞれ各セッションの要約を報告した。これに対し、フェアリー代表が、米国カリフォルニアにおける電子自治体推進運動である「スマート・バレー・プロジェクト」の経験を踏まえながら、IT化の推進を通じた行政の透明性向上、役人が住民を顧客として見る考え方が広まっていることなどを説明した。その後、他のパネリストも含めて議論が進められ、IT革命の進展の下で、改めてトラスト(信用)の重要性をセキュリティーとの関連も含めてクローズアップする必要があることや、NPOなど市場と政府の間を埋めるものの役割が高まっていること、そして従来型の国の役割はインターネットの発達や「ブランド」の威力などにより着実に低下している一方で、政府自身は多様な役割を本来担うべきものであることなど、様々な考え方が集約されつつ提示された。 (富岡則行、主任研究員)

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この講演会は日本財団の助成事業により行っております。