21世紀の幕開けにおける戦略課題の研究
平和研会議報告
「南・東南アジア地域における海洋安全保障」3

 最後の第4セッション(司会:志方俊之世界平和研究所顧問)では、「海洋安全保障における国際協力のあり方と日本の課題」をテーマに次の3人が報告を行った。まず、マレーシアのJ.N.マク海洋問題研究所研究部長は、非伝統的な脅威として海賊への対応の必要性を指摘し、問題の根本解決のためには、貧困対策が不可欠である点を強調した。


 次に、秋山昌廣シップ・アンド・オーシャン会長(元防衛事務次官)は、SLOCに対する中国の対応変化について指摘すると共に、日本の役割として「オーシャン・ガヴァナンス」構築へのイニシアティブを提言した。最後にオーストラリアのサム・ベイトマン ウーロンゴ大学政策副部長は、多国間安保協議枠組みについて、特にトラック2の有効活用を強調した。討論においては、沿岸国がローマ条約に未加盟である問題や「オーシャン・ガヴァナンス」の定義・役割の問題等について主に論じられ、国家を超えた取り組みとして具体的に何が出来るのか等、更に詰めていく必要があるとの指摘がなされた。


 以上の議論を受けて、公開シンポジウムでは、大河原良雄世界平和研究所理事長の司会により、米国のキャンベルCSIS上級副所長、インドのロイ元海軍中将、インドネシアのジャラール教授、オーストラリアのベイトマン教授、志方俊之研究顧問がパネリストとして、各セッションの要約も踏まえつつ報告を行った。


 討論では、他の会議参加者からのコメントも受けつつ、主に「オーシャン・ガヴァナンス」の問題及び海軍と沿岸警備隊との相違について意見が交わされた。「オーシャン・ガヴァナンス」については、海洋を巡る新たな問題に対して、国家を超えて海を総合的に管理していく枠組みが必要であるとの認識を共有しつつも、その表現については、「統治」のニュアンスもあり、異論があるとの指摘がなされた。海軍と沿岸警備隊については、それぞれの国の事情により、担う役割等も異なることが浮き彫りになったが、今後は、相互の協力と役割分担の必要性について指摘がなされた。この他、フロアーから、民間部門の警備能力の強化やマラッカ海峡利用国による費用負担を含むフレームワークの必要性等についての意見が寄せられた。討議を通じて、海洋安全保障という言葉に代表されるものの中に非常に多くの側面がカバーされていることが浮き彫りになったとともに、問題への取り組みにおいては、単に表面的な事象のみでなく、構造上の問題への取り組みが必要である点が強調された。

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この講演会は日本財団の助成事業により行っております。